解約ヒアリングは、これからサービスを解約する顧客に対するヒアリングのため、ストレスも大きい業務です。
ただ、解約ヒアリングを元にサービスの継続率を上昇させ、チャーンレートを低下させることによって、事業の成長スピードは劇的に変化するほど重要なものです。
今回は、解約ヒアリングが重要な理由や注意点、ヒアリング内容などについて紹介します。
解約ヒアリングとは?
解約ヒアリングとは、サービスを解約を打診されて解約阻止ができなかった企業に対して、今後の自社サービスの改善のために、解約理由や意思決定に至るまでの流れなどを聞くことです。
SaaSは、顧客のチャーンレートをどれだけ低減できるかによって、成長スピードや成長の上限、投資額や時期の判断が大きく変わります。
チャーンレートを低減させる上でも解約ヒアリングは、非常に重要な活動の1つです。
解約ヒアリングの重要性
解約ヒアリングは、なぜ重要な活動といえるのか、その理由について紹介します。
1.チャーンレート改善の重要な情報になる
解約ヒアリングで集まったデータを集計し、ユーザーの解約理由やつまづいたポイントに共通点がある場合、その共通点を解消することによって、解約件数が減る可能性があります。
解約の因子を潰していくことによって、将来的なチャーンレートが下がっていくことが期待できますので、チャーンレート改善のために非常に重要な情報です。
2.自社が狙うべき顧客像、狙うべきではない顧客像が明確になる
解約ヒアリングを行う中で、自社サービスと相性の良い顧客属性、相性の悪い顧客属性が分かることがあります。
- 従業員規模
- 業界
- 当初の導入目的
- サービスの活用度合い
- 利用人数
- 利用プラン
上記のように様々な切り口の中で、受注してはいけない顧客が分かった場合は、営業チームに実際の数値とともにフィードバックを行いましょう。
3.サクセスロードマップの見直しにつながる
顧客の解約ヒアリングを元に、躓いたポイントや利用率が下がった理由を深堀することで、これまで行っていたサポートの順番や内容の見直すべきポイントが分かりますので、サクセス活動の一連の流れを見直すきかっけになります。
4.ヘルススコアの重みづけに繋がる
3と同様に顧客が躓いたポイントや必要な支援に関する情報が貯まりますヘルススコアの項目の見直しや、ヘルススコアの中でも特に重視すべきポイントが分かり、その箇所の重みづけを重くするといった対応をとることも可能になります。
チャーンレートだけでなく、契約更新率にも目を向ける
CSチームの内部で重要視すべきKPIの1つは、初回の契約更新率です。
チャーンレートの計算方法は母数が全案件の件数や売上のため、事業が大きくなってしまったり、毎月の導入数が増えると、解約に関する問題に気付くのが遅くなります。
初回のサービス更新率を高い数値で維持できれば、安定してMRRが積みあがるためマーケティングやセールスに安心して投資できますし、CSの部署も一度継続したお客様なので手離れも良く、業績によい影響を与えます。
解約ヒアリングを怠ったSaaSの末路
解約ヒアリングを行わず、チャーンの対策を取らなかった企業には、1年契約の場合は1年後、そしてそれを放置した場合はさらに深刻な問題が発生します。
1.想定よりMRRが積みあがるスピードが鈍化する
解約ヒアリングを怠り、チャーンの対策をしなかった場合、元々想定していたMRRの積み上げ金額が下振れし、事業の成長スピードが下落します。
その事業スピードの下落分をカバーしようと、マーケティングやセールスに投資を行う場合、キャッシュが減るスピードが速くなり、事業の継続性に影響を与えます。
2.MRRが減っていく
チャーンの対策を放置し続けた場合、どこかのタイミングで、当月の新規MRR<当月の解約MRR(1年目~N年目の合計)といった状況に陥ります。
この状況まで放置してそこから対策を取ってもすぐには状況は変わらないため、どんどん計画からの開きが大きくなっていきます。
事業の成長性が見込めず、追加の資金調達が難しくなってしまったり、事業自体を断念することにも繋がりかねません。
解約を打診された時の顧客の状況
顧客から「解約したい」「次回の更新は無し」と言われた時点で、ほぼ顧客のなかで解約は決まっており、解約を打診されたタイミングで解約阻止のアクションをとっても手遅れです。
そのため、解約を打診された際は「何とか継続する方法はありませんか」と聞いて、難しそうでれば、解約ヒアリングを打診することがオススメです。
解約打診後にやってはいけないこと
解約を打診された後、「価格を値引きするので、利用を継続しませんか」という案内を行ってはいないでしょうか。
これは、お客様の本質的な課題の解決にはなりません。
顧客が予算取りを行ったところ、価格が予算よりオーバーしており、多少の値引きでその問題はクリアできるといった場合では、値引きで利用を継続してもらう方法もありではありますが、他の正規の金額でお金を払っている顧客のことを考えるとそれもあまりよろしくないです。
以上のことより、解約を打診された後、値引きで利用を継続してもらうことは、顧客のためにならないため控えた方が良いです。
解約ヒアリングは、誰が担当するべき?
解約ヒアリングは、原則その顧客のサポートを行ったメンバーが行うことを推奨しています。
企業によっては、解約担当を設けて、事務的に手続きやヒアリングを行う体制にしているところもありますが、これまでの一連のプロセスの中で解約の原因やその背景について深堀りするためにも、その顧客のサポートを行ったメンバーに依頼するのが一番良いです。
解約ヒアリングのアポイントの取得方法
解約ヒアリングは、解約の打診を受けた際にその流れで行うのではなく、「後日30分程、解約の手続きについて説明や今後のためのヒアリングのお時間をいただけないでしょうか」と別日で設定することがオススメです。
解約ヒアリングでを有意義にするためにも、その顧客の最初の接点から現在に至るまでの一連のフローや導入目的やこれまでの打合せのログなどを確認し、表面的な情報を聞くヒアリングにせず、より詳しい解約を決めた・考えた背景と理由を聞ける準備をして臨みましょう。
解約ヒアリングで聞くべき内容
解約ヒアリングでは、下記内容について聞けると良いです。
ただストレートに聞いても正直に答えていただけない可能性もありますので、そこは聞き方を工夫しましょう。
- 解約が決まるまでの流れ
- 解約の理由
- 解約を考え出したタイミング
- 担当者は、継続/解約のどちらの意向が強かったかとその理由
- 他製品への乗り換えの有無とそのツール
- その他、ベンダー側に契約継続に足りなかったもの
解約ヒアリング結果の社内共有方法
解約ヒアリングで聞けた内容は、2種類に分けて社内に共有しましょう。
1.受注企業の共有と同様の共有
顧客の詳細情報や解約ヒアリングで聞けた事項を羅列して、速報としてチーム内に共有する。
2.数十件以上の解約ヒアリングの分析と対策の共有
解約ヒアリングを数十件以上実施して分かった、解約の傾向やその対策について共有します。
この際、営業ターゲットの見直しやCS活動の変更が生じる場合は、関連部署と調整しながら、顧客を混乱させることが無いよう、きちんと浸透させるところまでサポートを行いましょう。
解約ヒアリングを強化し、事業の成長スピードを加速させよう
今回は、解約ヒアリングが重要な理由や注意点、ヒアリング内容などについて紹介しました。
解約ヒアリングをこれまでやったことが無いという企業は、今すぐ始めてください。
また、業務的に解約ヒアリングを行っており、その後の改善活動に活かせていないという企業も今すぐに意識や行動を改めなしていただければと思います。
大変な業務ですが、事業にとって非常に重要な業務です。
解約ヒアリングを元に、事業の成長スピードを加速させましょう。